高濃度ビタミンC点滴療法

水素ビタミンC併用療法
~宮川メソッド~ がんの補完療法として

宮川 路子 法政大学教授・下北沢西口クリニック 院長

はじめに

 筆者が統合医療に取り組み始めてから早くも9年目を迎えています。2016年に水素との運命的な出会いがあり、栄養療法に水素療法を加える治療、「水素・栄養療法」を考案しました。
 その中でも特に水素ビタミンC併用療法については2017年、第一号の患者である、父のがん治療において補助療法として用いました。その際、水素ビタミンC併用療法の卓越した効果を目の当たりにしたことから効果の検証の必要性を感じ、2018年から2019年にはスウェーデン・カロリンスカ研究所において基礎研究を行いました。筆者がクリニックで診療するのは非常に限られた時間ですが、無料のメール相談も行っていて、今までに多くの患者さんが水素・栄養療法を取り入れ、さまざまな疾患において驚くような改善を認めています。 
 筆者が取り組んでいる水素・栄養療法は、医師による処方が必要なものではないため、誰もがすぐに取り入れることができます。また、病気の方だけではなく、すべての方にお勧めできる究極の健康増進法でもあると考えています。水素・栄養療法については、ホームページ「こころと身体の栄養療法」(https://eiyouryohou.com/)において情報発信を行っています。  

水素・栄養療法 

健康づくりの3本柱〜栄養摂取・腸活・血管活〜
 筆者は、健康づくりの基本は栄養の摂取、腸と血管の健康、血流促進であると考えています。どんなにバランスの良い食事や、高価なサプリメントを摂ったとしても、腸の粘膜に炎症などの障害があると、栄養を吸収することはできません。このため、腸を健康に保つための腸活が重要です。また、腸から栄養素を吸収できたとしても、若々しい血管と元気な血流がなければ栄養素を必要な場所に運ぶことができません。そもそも不調となっている身体の部位、臓器では血液の流れが滞っていることが多いのです。つまり、健康づくりには適切な栄養の摂取に加えて元気な腸と血管、そして滞りなく流れる血流を作ることが重要なのです。 
 そのためには運動や睡眠、そしてバランスの取れた食事が大切であるのは言うまでもありませんが、これらを整えることが難しい場合には水素・栄養療法が役立ちます。 
 栄養療法では、必要に応じて各種サプリメントを摂取します。そして、腸活や血管活(血管を元気にして血流を促進すること:筆者造語)においては、水素が多大な効果を発揮します。水素は活性酸素を除去し、腸の炎症を抑えて粘膜の状態を整えます。また、抗酸化作用により血管の老化も防ぐことができますし、副交感神経を優位にする作用により消化管の働きを活発にするとともに、血管を拡張させて元気な血流も実現します。水素は腸活、血管活、健康増進に必須のものなのです。 

水素の健康効果 

⑴水素は腸内でつくられる〜百寿者の健康と水素〜 
 健康な人の腸内では善玉菌が食物繊維を材料にして水素を産生しています。それらの水素は腸粘膜から血中に吸収されて全身を巡り、健康づくりに役立つのです。 
 水素の主な健康効果は活性酸素の除去です。呼吸によるエネルギー産生、紫外線、ストレス、大気汚染、食品添加物、農薬などの化学物質、放射線、喫煙、激しい運動などによって生み出される活性酸素は、水素が血液中に豊富に存在していれば、すぐさま除去されて病気になるのを防ぐことができます。
 一方、腸の調子が悪く、腸内で十分に水素を作れていない人やストレスの多い人、炎症性疾患がある人などは、たとえ腸内で水素が産生されたとしてもすぐに消費されてなくなってしまい、活性酸素をしっかりと取り除くことができませんので、さまざまな不調が生じます。
 腸において水素が産生され、その産生量が呼気の水素量に反映されるということは1969年に Levittにより『New England Journal of Medicine』に報告されました。百歳を超える長寿の方々(百寿者)は呼気中の水素量が多いことが知られていますが、これは元気な百寿者は腸が健康で食事のバランスが良く、豊富な水素が血中を巡っていることを表していると思われます。 
 慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの報告によると、百寿者は血液中の炎症性マーカーの値が低い、つまり体内の炎症が少ないことがわかっています。また百寿者の血管は動脈硬化の指標であるプラークが少なく20歳程度若い状態であるそうです。筆者はこのことも、百寿者の呼気中の高い水素濃度と関係があるのではないかと推測しています。全身の炎症を抑えることは健康長寿の秘訣と言われていますが、それは腸でつくられる水素の抗炎症効果によるものかもしれません。水素は健康長寿のための鍵となっている可能性を秘めているのです。 
 
⑵水素の効用と、効果が期待できる疾患 
 水素の医学的効果に関しては、2007年に日本医科大学の太田成男教授らの研究グループが「水素分子が抗酸化物質として悪玉の活性酸素のみを選択的に除去し、酸化ストレスを軽減する」という研究を『Nature Medicine』に発表して注目を集め、水素研究が飛躍的に進むきっかけとなりました。
 多くの研究によって確認されている水素の健康効果には表1のようなものがあります。特に血流促進効果には目を見張るものがあり、水素吸入前後で比較した同じ部位の血管の画像を見ると、吸入前は血流がなくなってゴースト血管化していた部分の血管に 、吸入後には勢いよく血流が流れている様子が観察できます(図1、図2)。また、水素の働きによって改善効果を認めている疾患も多岐にわたっており、臨床試験も数多く行われています(図3) 。
 これらの疾患の他にも水素は、抗がん剤・放射線治療の副作用軽減、血液透析による障害の軽減、新型コロナウイルス肺炎、そして病気ではありませんがアンチエイジングなどにも効果があることが示されています。 
 
⑶水素のがんに対する効果〜抗がん効果、予防効果、治療の副作用を抑える効果 
 水素の抗がん作用については1975年にBaylor大学のDole博士らが『Science』に「高圧水素療法:がん治療法の可能性」という論文を投稿しました。それ以降も数多くの研究により水素の抗がん効果が明らかにされています。2019年に『Frontiers in Oncology』に発表された総説では、水素ガスはがんの成長を抑制するとともに、抗がん剤、放射線の副作用の軽減によって、抗がん作用を発揮すると報告されています。
 最近の研究では、水素がPD—1の発現を抑制するという、免疫チェックポイント阻害剤と同様の作用機序を持ち、がんの増殖に関係しているNF—kB経路を阻害したり、転移や浸潤に関係する好中球NFTsの産生を抑えたり、さらにキラーT細胞を活性化して抗がん効果を示す可能性が報告されています。
 がんに対する水素の効果は、 活性酸素の除去によるがんの予防・再発防止、直接的な抗がん作用、免疫力を高めることによる治療効果向上、手術による炎症を抑え、術後の傷の回復を促し、抗がん剤、放射線治療の副作用を軽減するというものです。特に副作用軽減は患者さんの負担を減少し、元気に治療を継続してがんに立ち向かうために非常に有効であると考えています。

水素ビタミンC併用療法:宮川メソッド 

⑴水素ビタミンC併用療法発案の経緯
 2016年にがん治療の副作用を軽減する方法を模索していた筆者は、さまざまな論文を読み込み、ビタミンCに水素を加えるという治療の着想に至りました。ともに抗酸化作用、抗炎症作用、放射線防護効果を持つ水素とビタミンCの組み合わせによって治療の副作用をより強力に抑え、さらに抗がん効果も高めることができるのではないかと考えたのです。また、ビタミンCは水溶性であるため、細胞膜の輸送体に依存して細胞内に取り込まれること、高濃度になり過ぎると逆に酸化作用を示す可能性があることに対しても対応できるのが、水素ビタミンC併用療法のもっとも重要なポイントです。副作用、標準治療の治療効果を弱める心配がないこと、誰でも簡単に導入できることも大きい利点です。
 水素ビタミンC併用療法を導入した第一号の患者は筆者の父親です。父は40年近く前、筆者が高校2年の時に腎臓がんを発症して手術を受けたものの、すぐに肺に多発転移して余命宣告を受けました。その際には、標準治療に加えて受けた統合医療による効果で、奇跡的な回復を果たしました。
 そして、およそ30年後の2017年に再び非常に悪性度の高い耳下腺がんを発症したのです。すでに頸部リンパ節に多数の転移を認め、余命は短いと思われましたが、手術と放射線治療、抗がん剤治療を受け、さらに水素・栄養療法を組み合わせて、再び奇跡の復活を遂げたのです。 放射線治療では、副作用が懸念されましたが、水素ビタミンC併用療法が効果を発揮しました。放射線治療を終えて帰宅後、水素吸入と高濃度ビタミンC点滴を行うとあっという間に炎症が治まり、約1時間半の治療終了時には皮膚の真っ赤な炎症や口内炎の症状がほぼ消失したのです(図4〜図6)。
 放射線治療は約2カ月間続きましたが、父は副作用に苦しむこともなく無事に治療を終えることができました。水素ビタミンC併用療法に加えて糖質制限、ビタミンB1大量摂取、FBRA(玄米酵素)による腸活なども合わせて実施し、術後再発もなく91歳の今も元気に過ごしています。父の治療の経験から、水素ビタミンC併用療法の治療効果を確信し、スウェーデン・カロリンスカ研究所において基礎研究を行い、水素とビタミンCには抗がん効果と、放射線の抗がん作用増強効果、正常細胞に対する放射線防護作用があることを確認しました。
 加えて重要なことは、水素ビタミンC併用療法が、がん患者さんにとって精神的支えとなることです。がんと闘う患者さんは病気による体調不良や不安から、精神的に不安定になる場合が多いのですが、生活の中にこの療法を取り入れることによって、辛い副作用を軽減して元気に闘病生活を送れるようになります。そして治療後には再発の予防にもなるということから、不安の解消に大きく役立つと考えています。しかも、この治療は毎日の生活の中で患者さんが自主的に行うことができることが大きい利点となります。がんに対する水素ビタミンC併用療法については、現在法政大学から特許申請中で論文準備中です。水素とビタミンC併用療法を「宮川メソッド」と名付けて、普及に努めています。 
 
⑵水素ビタミンC併用療法の導入法
①水素の導入法
 水素を日々自宅で取り入れる方法には水素吸入、水素水、水素風呂、水素サプリメントなどがあります。第一選択は水素を短時間に大量に体内に取り入れることができる水素吸入ですが、水素水や水素風呂にはまた別の効果があります。水素水は食欲を増し、がん患者さんの悪液質を改善することも報告されています。水素吸入器や水素水生成器、水素風呂の器械の導入にはある程度費用がかかりますが、最近ではレンタルすることもできるようになり、取り入れやすくなりました。
 筆者のクリニックでは、慶應義塾大学医学部水素ガス治療開発センターの研究で確認されている最適な量(99・99%の水素を1分間に250㎖程度)を満たす水素吸入器(図7)を用いています。この器械は最低5万時間という非常に長い耐久時間となっています。クリニック用の器械は、いかに水素量が多いかということを競う傾向がありますが、水素は血中濃度が一定量に達すると呼気から排出されてしまいますので無駄となり、多ければ良いというものではありません。水素量が多い器械は水素発生量に合わせた電解セルの設計が必要となり、サイズも大きいものとなります。負荷がかかりますので熱を持ったり、使用電力も多くなり、耐用年数が短くなる可能性があります。ですから、〝適切な量〟ということが重要なのです。家庭用としては、もっと水素の量が少ない吸入器でも十分であると考えています。実際に、水素発生量が少ない吸入器でも効果を発揮しています。 
 吸入時間については、できるだけ連続吸入が可能な器械を推奨しています。ただし、長時間連続吸入が可能な器械は高額であるため、1時間程度の吸入時間が可能であれば、細切れに何回も吸入することで1日に必要な吸入時間を確保できると考えています。最近では水素吸入と水素水生成ができて、卓上における器械(図8)も出ており、とても便利です。こちらの吸入器は穏やかに吸入ができるため、鼻腔が乾燥することなく、効果を発揮します。 
 また、体表面に近い部分にあるがんには特に水素風呂の効果が期待できると考えて取り入れていますが、皮膚表面に出ているような乳がんなどにも効果的です。水素風呂生成器(図9、図10)や水素入浴剤により手軽に水素風呂を導入することができます。図8〜図10の器械については、比較的安価(月額5000円程度)でレンタルが可能であり、多くの患者さんに自宅でご使用頂いています。
 水素はクリニックに行ったときだけ吸入するのでは不十分ですので、自宅に水素機器を備えることが非常に大切です。それが不可能であれば水素サプリを摂取し、常に腸内で水素を発生させる状態に保つことが望ましいと考えています。 
 
②ビタミンCの導入法
 ビタミンCについては、クリニックで高濃度ビタミンC点滴を定期的に受け、合間には日々ビタミンCのサプリメントを服用します。特に、ビタミンCをリン脂質でできたナノカプセルに入れることにより吸収率を高めたリポカプセルビタミンC(LypoC)(図11、12)は、〝飲む点滴〟ともいわれており、筆者はほぼ全員のがん患者さんにご利用いただいています。
 高濃度ビタミンC点滴を受けることが難しい場合にはリポカプセルビタミンCのみで対応し、1日に5〜8包服用しているケースもあります(ただし、1包に0・2gの食塩が含まれているため、高血圧や腎機能障害の方は要注意)。高濃度ビタミンC点滴はクリニックでしか受けることができませんので通院や費用の負担が大きく、頻繁に受けることは難しいことも多いのですが、たまに受ける点滴よりも、日々のこまめなリポカプセルビタミンCの摂取により、常に血中ビタミンC濃度をある程度高く保つことが望ましいと考えています。
 ビタミンCをサプリメントで摂取し、自宅に水素機器を導入すれば、毎日途切れることなく水素ビタミンC併用療法を行うことが可能となります。

おわりに

筆者のクリニックでは、水素ビタミンC併用療法を標準治療に加えることで、がんの治療効果が高まったり、放射線治療や抗がん剤による副作用が楽になったりしている患者さんがたくさんいらっしゃいます。特に、治療の副作用を抑えるための有用な薬剤はほとんどないため、それらに対する効果が期待できる水素ビタミンC併用療法はがん治療の救世主ともいえるでしょう。がん標準治療の補完治療(支持療法)として、すべてのがん患者さんにお勧めしたいものです。特にがん治療の辛い副作用に苦しんでいる方や副作用が心配で標準治療を受けることを迷っている方には、水素ビタミンC併用療法をぜひとも取り入れていただきたいと願っています。
筆者の夢はすべてのがん患者さんに水素・栄養療法を取り入れていただき、苦しまないがん治療を実現すること、さらに水素・栄養療法によって多くの方にがん予防・健康増進を目指していただくことです。そのために今後も啓蒙活動を続けていきたいと思います。本稿は筆者の近著『人生100年の健康づくりに医師がすすめる最強の水素術』(サンライズパブリッシング、図13)から抜粋した内容となっています。詳しくは本をお読みいただければ幸いです。 水素の導入方法などについてご興味をお持ちの方はどうぞご連絡ください。
 
連絡先:miyakawa@hosei.ac.jp

表1 水素の健康効果 


図1  水素吸入前 爪の付け根の血管
写真提供:NPO法人 毛細血管・研究会


図2 水素吸入後 爪の付け根の血管
写真提供:NPO法人 毛細血管・研究会


図3 水素による改善効果を認めている疾患
太田成男『水素医学の創始、展開、今後の可能性:広範な疾患に対する分子状水素の予防ならびに治療の臨床応用へ向かって』、『生化学』誌Vol.87、No.1より改変引用


図4 治療開始前
照射部位の皮膚が赤く炎症を起こしている


図5 治療開始後20分経過
皮膚の炎症は半分程度に消失


図6 治療終了時
皮膚の炎症はほぼ消失


図7 ドクターズマンH2JI1


図8 リタアクア


図9リタライフ本体


図10 リタライフ電極


図11 SPIC LypoC


図12 SPIC LypoC


図13