日本の医療界に高濃度ビタミンC点滴療法(以下、ビタミンC点滴)が導入されたことによる最も大きいインパクト、それは「ビタミンC点滴は町医者でも患者さんのがん治療に関われる道を開いた」ことに尽きます。
私が初めてビタミンC点滴を悪性リンパ腫の患者さんの治療に用いた2006年は、がん患者さんの治療は大学病院や総合病院、がんセンターの専門医が行うべきであり、「開業医ががん患者さんの治療などするのはもってのほかである」という時代でした。そのため、開業医は自分が専門病院に紹介した患者さんが化学療法の副作用でボロボロになって戻ってきても、なすすべがありませんでした。
しかし、今や開業医がビタミンC点滴とオーソモレキュラー栄養療法を用いて、これ以上治療の方法がないというステージⅣの患者さんばかりでなく、化学療法との併用を望む患者さん、あるいは化学療法を希望しない患者さんの治療にまで関われるようになったのです。
そこで、日本におけるビタミンC点滴によるがん治療の普及に尽力した方々を紹介すると共に、ビタミンC点滴が福島原発事故による放射線障害や新型コロナウイルス感染に貢献した経緯について述べていきます。
日本に本格的にビタミンC点滴によるがん治療が拡がるまで
ビタミンCによるがん治療は、ノーベル賞を2回受賞したライナス・ポーリング博士(写真1)が1976年に提唱しました。しかし、メイヨークリニックの研究者らにより否定されたために、この治療は忘れ去られたのでした。しかし、ポーリング博士の盟友である国際人体機能改善センター(現リオルダンクリニック)のヒュー・リオルダン博士(写真2)がポーリングの意志を引き継ぎ、ビタミンC点滴によるがん治療(リオルダンプロトコル)が確立しました。そして、今では多くのビタミンC点滴によるがん治療の臨床試験が行われ、論文も多数発表されるようになりました。
2007年に筆者(柳澤厚生)はリオルダンクリニックを訪れ、所長のロナルド・ハニハイキ医師(写真3)の下でリオルダンプロトコルを教わりました。帰国後は点滴療法研究会のセミナーを通じて、日本中の医師に向けてリオルダンプロトコルの普及に務めました。ハニハイキ所長はこれまでに招聘に応じて10回も来日し、ビタミンC点滴によるがん治療の素晴らしさを日本の医師に教えています。
このような経緯から、リオルダン博士のビタミンC点滴によるがん治療を日本に本格的に導入したのは筆者のように見えますし、よくそのように言われます。しかし、実は私の数年以上前から分子栄養医学研究所の金子雅俊先生(写真4)が、日本で栄養医学を学ぶ医師にビタミンC点滴によるがん治療を普及させていたのです。金子先生はポーリング博士に師事し、リオルダン博士とも親しく、日本にオーソモレキュラー栄養医学を伝えた先駆者でもあります。
2010年10月に「高濃度ビタミンC点滴療法によるがん治療」の国際シンポジウムを東京で開催しました。ジョン・ホッファー教授(マギル大学医学部内科・カナダ)(写真5)、ステーブ・ヒッキー博士(メトロポリタン大学・イギリス)、スティーブン・カーター氏(国際オーソモレキュラー医学会事務局長)、川田浩志助教授(東海大学医学部血液腫瘍内科)など、国内外の研究者や臨床医が一堂に会しました。
日本では点滴療法研究会がビタミンC点滴によるがん治療を教える定期的なセミナーを開催し、これまでに5000人以上の医師・歯科医師らが参加しています。加えて2017年と2024年には、ハニハイキ所長とトーマス・レヴィ先生を迎えてリオルダンIVCアカデミーを開催しました。リオルダンIVCアカデミーは、ビタミンC点滴によるがん治療を教えるために世界各国で開催されていました。コロナのパンデミックで活動を休止していましたが、今回は日本を皮切りに台湾など各国で開催される計画です。
福島原発事故〜ビタミンCは放射線被ばくから健康を守る
2011年3月11日に起きた東日本大震災により福島原発事故が発生、日本は未曾有の危機に襲われました。私たちは過去の研究論文を調査し、ビタミンCなどの抗酸化栄養素が人々を放射線障害から守ることがわかました。しかし、私たちが政府の有識者に伝えても無視をされていました。5月に国際オーソモレキュラー医学会で私は名誉の殿堂入りをしましたが、そのときの記念講演では急遽講演タイトルを変更し、ビタミンCが被ばくから人々の命を守ることを出席者に伝えました。
学会出席者は私たちの提唱をスタンディングオベーションで称賛し、提唱を受け入れるように日本政府へ署名と書簡を送ってくれました。しかしながら、残念なことに日本政府はこの提唱を無視したのでした。その後、私たちは福島原発事故の現場で働く作業員の遺伝子異常を調べ、被ばくによる遺伝子異常がビタミンC点滴や抗酸化栄養素で正常に回復することを明らかにしました。
私は世界各国の15の学会でこのデータを発表しましたが、どの国でも日本政府が私たちの提唱を受け入れないことに信じられない様子でした。私たちはドキュメンタリー映画を制作し、DVDやYouTubeなどで世界中に配信をしました(写真8)。これは近未来に再び世界のどこかで原発事故が起きたとき、すぐにビタミンC点滴を開始できるように伝えておくことが必要だと考えたからです。
ビタミンC点滴は新型コロナ感染の重症化を防ぎ死亡率を減らす
2019年12月末に新型コロナウイルスが発生、瞬く間に世界に拡大することになりました。私が会長をしていた国際オーソモレキュラー医学会では翌2020年1月末には感染予防や重症化予防のために、①ビタミンC、②ビタミンD、③亜鉛、④マグネシウム、⑤セレンの摂取を推奨しました。そして、3月には国際オーソモレキュラー医学会のアンドリュー・ソウル先生(写真9)と共同執筆で『Townsend Letter』誌に新型コロナ感染で入院する患者さんにビタミンC点滴を推奨する論文を発表しました。
その後に、世界各国でコロナ感染の重症患者さんにビタミンC点滴を用いて有用であった論文がいくつも発表されました。現在ではコロナ後遺症やワクチン後遺症の治療の選択肢としてビタミンC点滴が用いられています。
終わりに
私は高濃度ビタミンC点滴療法という素晴らしい治療に出会い、それは後の私の医師としての人生を大きく変えることになりました。ビタミンC点滴はがん患者さんの基本治療であり、またさまざまな慢性炎症疾患や急性感染症にも第一選択肢となるほどの安全で効果的なものです。
現在、点滴療法研究会では1000人を超える医師、歯科医師などが会員登録し、広く国民の皆様にビタミンC点滴を提供可能なように全国に拡がっています。多くの若い医師らがこの素晴らしい治療を拡げ、また新しい成果を生んでくれることを願ってやみません。