オゾン療法は、40年以上前からヨーロッパを中心に広く行われており、その対象となる疾患は、生活習慣病、がんなど加齢に伴う疾患をはじめ、整形外科疾患、感染症など多岐にわたります。これは全身の細胞を活性化し、酸化ストレスを消去する抗酸化力を高め、元々人体に備わっている自然治癒力を引き出すオゾン療法の作用のためと考えられます。
オゾン療法の国際学会であるISCO3(International Scientific Committeeof Ozone Therapy)が制定したガイドライン「マドリッド宣言」には、各疾患に対するエビデンスレベルが示されています。がん治療においては、「がん関連疲労」に対しエビデンスレベルC「科学的根拠がある」とされています(表1)。
オゾン療法には、自身の血液を体外でオゾンにより活性化し点滴で戻す、大量自家血オゾン療法(MAH:Major Autohemotherapy)をはじめ、オゾンの直腸注入療法、局所注入療法をはじめいくつかの方法があります。本稿では、がん治療における大量自家血オゾン療法(以下オゾン療法)について述べてまいります。
がん治療におけるオゾン療法の原理
シエナ大学(イタリア)生理学部のヴェリオ・ボッチ教授は、オゾン療法における多大な研究によって知られています。ボッチ教授は「オゾン療法による正常酸素状態の回復が腫瘍増殖を制御する可能性がある」と述べており、その基本原理1を抜粋してみました。
表1 オゾン療法によるがん補完療法
| レベルA「十分な科学的根拠がある」 |
| 脊椎疾患(椎間板ヘルニア、脊椎分離症など) |
| レベルB「科学的根拠がある」 |
| a)整形外科的疾患および限局性変形性関節症 b)筋骨格系および軟部組織の疼痛性障害 c)膝蓋軟骨軟化症、変形性膝関節症 d)腱障害(テニス肘、ジャンパー膝、肩部痛および回旋筋腱板の障害) e)ド・ケルバン腱鞘炎 f)手根管症候群 g)糖尿病および糖尿病性足病変 h)慢性疲労症候群および線維筋痛症 i)突発性感音難聴、メニエール病 j)進行虚血疾患、下肢動脈虚血 k)加齢性黄斑変性症(萎縮型) l)齲歯病変 m)骨髄炎、胸膜肺気腫、瘻孔を伴う潰瘍、感染性創傷、褥瘡、慢性潰瘍、熱傷 n)抗生物質または化学療法耐性細菌、ウイルス、真菌による急性および慢性感染性疾患、バルトリン腺炎および膣カンジダ症、足部白癬 |
| レベルC「科学的根拠がある」 |
| a)がん関連疲労 b)喘息 |
| a)自己免疫疾患:多発性硬化症、関節リウマチ、クローン病、慢性炎症性腸疾患 b)肺疾患:肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症および急性呼吸窮迫症候群 c)皮膚疾患:乾癬、湿疹およびアトピー性皮膚炎(以下省略) |
はじめに
腫瘍の低酸素状態は、がん細胞が抗がん剤や放射線療法に対する抵抗性を持つ主なメカニズムとして広く認識されており、さらに新生血管形成、脱分化、転移を促進する重要な要因でもあります。腫瘍内の平均pO2は正常細胞の1/4以下であり、これは腫瘍の特異性を示しています。
正常組織にとって低酸素血症は一貫した代謝的不利をもたらしますが、腫瘍細胞においては、成長と拡大に有利であると結論付けられています。ほとんどの腫瘍タイプにおいて、対応する正常組織と比較して低酸素誘導因子(HIF‐1‐α)の過剰発現が検出されています。腫瘍において通常酸素状態を再確立することは、HIF‐1‐αの過剰発現を抑制し、その分解を促進し、腫瘍の進行と転移を制限する可能性があります。
がん患者さんにおいて低酸素状態を修正することは可能か
腫瘍の酸素供給を改善するために、純酸素吸入、O2・CO2混合ガス吸入、エリスロポエチン、血管作動薬、温熱療法などさまざまなアプローチがなされており、それぞれ一定の価値があります。しかし、残念ながら腫瘍の低酸素状態を持続的に修正する問題を解決するものではありません。
虚血組織への酸素供給を改善することは可能か
オゾン療法の手法は最適化されており、末梢循環障害に対する有意な臨床効果が確認され、長年にわたり副作用なく治療が行われています。まず重要なのは、Na/K‐ATPase、アセチルコリンエステラーゼ、スーパーオキシドジムスターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH‐Px)、グルタチオンリダクターゼ(GSH‐Rd)、カタラーゼ、グルコース‐6‐リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)などの赤血球酵素に対する損傷が認められないことです。
酸素(O2)と比較して、オゾン(O3)処理されたサンプルに有意な変化は見られず、血液の強力な抗酸化システムがヘモグロビンや酵素を十分に保護していることが示されています(表2)。
オゾンはどのように作用するか
オゾンが血液と反応すると早期には反応性酸素種(ROS)が、晩期には脂質酸化生成物(LOP)が生じ、生物学的効果が得られます。早期の効果は、過酸化水素の急激な増加によって引き起こされ、赤血球、白血球、血小板、血管内皮細胞の多くの生化学的経路が活性化されます。晩期の効果は、半減期の長いLOPによるものであり、内皮細胞や複数の臓器の実質細胞を活性化します。特に骨髄は重要です(図1)。
早期の効果はオゾンが血漿に溶け、過酸化水素や脂質過酸化物を生成する際にガラス瓶内で起こります。ROSはほぼ即座に還元され、これには還元型グルタチオン(GSH)が使用されます。GSH‐Rdは、補酵素である還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を利用して、酸化型グルタチオン(GSSG)を元のレベルのGSHに再生します。
一方、酸化型NADHは、ペントースリン酸経路の活性化後に還元され、この経路のキー酵素がG6PDHです。解糖が加速され、それに伴ってATPレベルが増加します。さらに、再輸血された赤血球は、細胞内のpHのわずかな低下や2,3‐ジホスホグリセリン酸(2,3‐DGP)レベルの増加によって酸素‐ヘモグロビン解離曲線が右にシフトし、短期間で虚血組織への酸素供給を強化します。
晩期の効果はより重要です。骨髄では、再輸血された血液中に存在する微量のLOPが弱いストレス因子として作用し、赤芽球系の分化に影響を与えます。非常に短い酸化ストレスを引き起こし、それによって適応機構が活性化され「より優れた生化学的特性を持つ赤血球」が生成されることが判明しています。この赤血球は、2,3‐DGPや抗酸化酵素の含有量が高いため、虚血組織への酸素供給能力が向上します。
加齢黄斑変性症患者さん(N=4)で、7週間で13回のオゾン療法(約3・8Lの血液をオゾン化)後に、古い赤血球と若い赤血球を密度勾配分離した結果、オゾン療法で生成された若い赤血球群でのG6PDHの著しい増加が認められました(表3)。これらの変化は、特に基礎レベルが低い患者さんで顕著でした。
オゾン療法による正常酸素状態の回復
加齢黄斑変性症や慢性四肢虚血患者さんでの臨床的改善は、オゾン療法の2カ月後でも認められたため、オゾン療法を継続することで、腫瘍組織の酸素供給も改善に向かうことが示唆されます。ROSとLOPは、赤血球機能の向上だけでなく白血球、血小板、内皮細胞の活性化も促進します。
オゾンが過酸化水素の一時的な作用を介して、白血球に対する軽度のサイトカイン誘導因子として作用することにより、腫瘍成長によって通常抑制されている免疫系の協調的な活性化が引き起こされる可能性も示唆されています。
また、化学療法に抵抗性のあるがん患者さんにオゾン療法を適用するオープン研究より、カルノフスキー指数(KPS)が70%(自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能)以上の患者さんは、たとえ広範な転移を抱えていたとしても、30〜45回の治療を受けた後、生活の質(QOL)が著明に改善することが報告されています。
まとめ
オゾン療法は次のような効果を持つことが証明されています。
・血液循環と虚血組織への酸素供給の改善
・酸化ストレスの正常化および抗酸化システムの上昇
・免疫系の軽い活性化
・患者さんに健康感をもたらす
オゾン療法が腫瘍の進行を安定させ、がん患者さんの生活の質を改善する効果を科学的に評価するときが来ています。
当院でのオゾン療法の実際
がん治療の基本は標準治療であり、その補助として当院では高濃度ビタミンC点滴療法を中心に行っています(標準治療の適応でない方、もしくは選択肢のなくなってしまった方においても、積極的に治療相談に乗っています)。
高濃度ビタミンC点滴を行った上で、まだ疲労感や体力低下が目立つ方に対し、オゾン療法の併用を検討します。これは、ガイドライン「マドリッド宣言」(表1)にしたがって、「がん関連疲労」をオゾン療法の適応としているからです。100mlの採血を行い、基本的にオゾン濃度30 µg /ml、ガス量100mlにて活性化を行います。この濃度で施行後に疲労感などが出る方は、2回目から濃度を20 µg /mlに下げています。
オゾン療法による活性化は2週間続き、その後の2週間で消失していくと考えられていますので、基本は4週間に1回、より効果を求めたい方に対しては2週間に1回としています。高濃度ビタミンC点滴を受けられている患者さんの2割程度が、オゾン療法を併用しています。
一方、上述の原理より、短期間に多数回のオゾン療法(週2回を7週間など)を行う海外の医療機関もあると聞いており、一考の余地があると思われます。
オゾン療法は安全性の確立された治療法です。さらにエビデンスが積み重なることで、がん治療におけるより良い使用法、ガイドラインが確立されることを期待しています。
参考文献
1) Velio Bocci, MD, PhD, Alessandra Larini, PhD, Venna Michelil, PhD: Restorationof normoxiaby ozone therapy may control neoplastic growth:a review and a working hypothesis.J Alternative and Complementary Med 2005;11 (2): 257-265.
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