高濃度ビタミンC点滴療法

余命宣告された患者が点滴療法により約10年間も延命
——食道がんステージⅣからのサバイバー
として悠々自適に暮らしている

増田 陽子 リオルダンクリニック フェロー 医師

 統合医療との出会い

 2009年10月、叔父が食道がんのステージⅣと診断されました。「あぁ、おじさんも、もう長くはないな」。当時、私は医学部の4年生でしたが、そう思ったことを今でもはっきり覚えています。その後主治医には「もう治療はないので、ご自宅で余生をお過ごしください」と匙を投げられましたし、そのうえ食道がんを2回再発、喉頭がんと胃がんにもなりました。
 でも叔父は、今でもそれなりに元気に生きています。家に行くと「おっす。陽子さん、ちゃんとやってるか」と、大抵コタツに入ってテレビを見ながら、にっこりしてくれます。通院は年に1回の内視鏡検査のみで、現在の治療は、真面目な優等生タイプの患者ではないので、気が向いたときに栄養のサプリや漢方、点滴をするくらいです。放射線治療や化学療法の副作用なのか、不整脈や手の痺れはあるけれど、約10年間も、食道がんステージⅣからのサバイバーとして悠々自適に暮らしています。
 標準医療だけだったら、統合医療の力を知らなければ、叔父の経過はほぼ奇跡でしょう。しかしこれは奇跡ではありません。叔父や家族が、自力で掴み取った結果なのです。そしてこの闘病は、私のがん治療に対する概念を根本から変えてくれました。ガイドラインに沿った診療のみが医療ではありません。諦めずに患者さんを支えるのが医師であり、医療のあるべき姿だと思います。そう考えるようになりました。
 盲腸や心筋梗塞、結核など、昔は救えなかったほとんどの急性疾患は、現代医療でなんとかなります。しかし、がんや糖尿病、動脈硬化など慢性疾患はどうでしょうか。巨額の研究費をかけて世界中の研究者が何十年も研究しているにもかかわらず、がんで辛い思いをする人は全然減らないどころか、日本ではむしろ増えています。
統合医療や高濃度ビタミンC点滴療法は、それら慢性疾患の治療の切り札になり予防にもなります。私はそう確信していますので、リオルダンクリニックに留学し勉強してみたいと思いました。

リオルダンクリニックのご紹介

 オズの魔法使いの舞台、アメリカはカンサス州にリオルダンクリニックはあります。州内の3つのクリニックで、約50人のスタッフやボランティアが臨床、研究、検査部門で働いています。高濃度ビタミンC点滴の実績は9万件以上になります。日本で使われているプロトコルを開発したのも、この研究部門です。
 私の研修しているウィチタのクリニックは、37ヘクタールの広大な敷地に、中心となる8つのドーム、瞑想やヨガのレッスンの会場になるピラミッド、有機農園、自然保護区、池などがあり、ドームには診療所や研究所、検査室、サプリや本のストア、図書室、会議室、調理室などがあります(写真参照)。自然保護区では野生の鹿やターキー、リスや稀にスカンクも見ることができます。
 クリニックを訪れる患者さんは、アメリカ全土はもちろん、世界47カ国に及び、1日の来院数は10〜15人、がんの患者さんは7割程度です。高濃度ビタミンC点滴は1日約12件、他にもキレーションやオゾンの局所注射、予防医療やダイエットの相談、小児の患者さんが来院することもあります。
 患者さんは一方的に治療される受け身の存在ではなく、「co-learner(共に学ぶ人)」として、クリニックの協力を得ながら自身の健康回復の方法を学び、積極的に責任を持って治療に関わるよう期待されます。クリニックの講演会や図書室、発行している月刊誌『ヘルスハンター』などは自由に利用でき、100以上ある過去の講演もYoutubeで、無料で見ることができます。講師もとても豪華です。Youtubeの自動翻訳機能を使えば日本語字幕で見ることもできますし、とても勉強になりますので、是非ご覧になってみてください!

ハニハイキ先生、ミキロヴァ先生のご紹介

 院長のハニハイキ先生は柔らかな笑顔と物腰で、患者さんにとても人気があります。初診では1時間半かけてお話しを伺い、徹底的な検査をします。治療に関しては、点滴やサプリメントでの栄養療法と同様、食事や運動など生活改善も大切にされているため、患者さんの意識づけを重要視されています。毎週月曜日には無料の電話相談で、受診する前の患者さんにクリニックではどんなことができそうか、説明されたりもします(他の曜日は他の医師が担当します)。
 先生がとても素敵なのは、従来の医療を一切批判しせず、また生活改善が難しい患者さんにも寛容なところです。医療の進歩に時間がかかるように、生活を一気に改善することが、ご本人にとって時にとても難しいことを熟知されているからだと思います。たまにはお酒や体に悪いものも食べたくなるときもありますし、運動をサボりたくなったりもします。そういう気持ちを認めながら、徐々に良い方向に持っていく診療スタイルはとても勉強になります。
 ミキロヴァ先生はクリニックの研究部門で、主にビタミンCに関する研究を行い、年に約5本の論文を発表し続けています。もともとは物理学、数学、統計学がご専門で、医学研究はリオルダンクリニックに来てからということですが、今やビタミンC研究の第一人者であると共に、ビタミンCに関する研究を牽引する他の研究者ともツーカーの仲です。先生の、
「医学研究ではよくある、マウスの研究結果なのに、ヒトにも有効かもしれない、といった結論になるのは他の研究分野ではあり得ない。まったく科学的ではない」
 という言葉が印象に残っています。これが真の研究者の考え方なのだと、とても尊敬しました。そういう目で改めて医療の世界を見てみますと、確実なことや科学的に証明されていることは、とても少ないと痛感します。標準医療のなかで無作為比較二重盲検試験(RCT)が行われているのは半分以下と言われており、これがEBM(Evidence Based Medicine:科学的根拠に基づく医療)を謳う現代の医療の姿です。

RECNACプロジェクト(新しいビタミンC点滴の研究)

 日本で行われている高濃度ビタミンC点滴プロトコルの元となった、RECNACプロジェクト(cancer〈がん〉を逆に綴った造語)の第3弾、RECNAC3の計画が、進められています。
 高濃度のビタミンCにはがんを殺す効果がありますが、点滴から時間が経ち血中濃度がある一定より低くなると、復活してくるがん細胞があることがわかっています。それが再発の原因となる可能性があるため、持続点滴を使いビタミンC濃度をキープしよう、というのがRECNAC3の主なコンセプトです。
 またここでミソなのは、単にビタミンCの持続点滴をするだけではなく、患者さんごとオーダーメイドに、栄養療法や食事、生活の改善を組み合わせて治療するというところです。この患者ごとの、複数の治療を組み合わせたマルチモデルな治療は、今後の医療の主流となってくると思います。またそれに伴い、医療の基である「エビデンス」も、現在の1つの薬を試験する、変数=1の試験から、複数の治療による多変数の臨床試験に、主流は移ってくると思われます。RECNAC3は、持続ビタミンC点滴の臨床試験の先駆けであるとともに、ビタミンC点滴と異なる構成要素を試験した臨床試験の先駆けともなる予定です。今年の春にはスタートする予定です。

高濃度ビタミンCの最近のトピックス

 1つ目は、従来考えられていた、高濃度のビタミンCが過酸化水素を発生させることによる抗がん効果だけではなく、遺伝子の発現自体を変化させることによって抗がん効果を発揮する、エピジェネティックな効果です。詳しいことは自分のブログに書いているので、そちらも見ていただきたいですが、遺伝子変異が原因でがん化したり増悪するのに対し、ビタミンCが直接その変異を抑えてがん化を防いだり、DNAが修復されるようにすることが、ここ数年で明らかになりつつあります。
 次に、2017年の敗血症性ショックに対するビタミンCの論文は、世界中の臨床医の注目を集めています。NIH(アメリカ国立衛生研究所)が主体となって組まれた他施設RCTがTACT studyとして走り出しています。ビタミンC群はみるみる良くなるため、現場の看護師は二重盲検なのにその患者がビタミンC群かプラセボ群かすぐにわかってしまうらしいのです。絶対にプラセボ群に割り振られたくない試験です。

私の考える今後の医療

 約4カ月間、ハニハイキ先生やミキロヴァ先生にご指導いただきながら研修し、アメリカ国内の学会にも積極的に参加し勉強してきました。まだ研修期間の半分も終わっていませんが、ビタミンC点滴はとても強力なツールであること、しかしそれだけですべて解決できるほど簡単なものではない、ということを十分理解することができました。
20世紀の医療では、病気には1つの原因があり、その原因に対する薬や治療法によって病気を治す、というのが一般的な考え方でした。またその原因の1つに遺伝子があり、遺伝子が病気を引き起こすとも考えられていました。
 しかし、21世紀になった今、細胞周囲の環境が遺伝子の発現を変化させ、病気になったり予防したりすることがわかっています。がんをはじめとした多くの慢性疾患は、急性疾患と違い、1つではなく複数の原因があり、しかもその原因は生活習慣であることが多いとも考えられるようになりました。お酒を飲みすぎたり運動不足だったりもしたでしょう。食卓には、農薬を使った飼料やホルモン剤、抗生剤をたっぷり与えられたお肉が並び、大好きなお魚は水銀を多く含んでいたかもしれません。毎日使っていた歯磨き粉はフッ素入りで、フタル酸エステルが漏れ出すペットボトルで持ち歩いていたお水の塩素含有量は、アメリカの10倍、家の周りは排気ガスが多く、お風呂場のタイルの裏はカビが生えていた、という人もいると思います。それらさまざまな原因が細胞周囲の環境を変え、遺伝子発現を変え、積み重なって時間をかけて病気が発症しているのに、それを1つの薬や手術で解決したい、と言うのは流石に楽観的すぎやしないでしょうか。慢性疾患の原因は個人によって違い、複数で、慢性疾患はスペクトラムなのです。
 でも安心してください。FDA(米国食品医薬品局)の理事であるロバート・カリフ先生は、今までの単一の治療で解決できなかった多くの慢性疾患を、原因の1つ1つを治療していく、マルチモデルなアプローチなら、(複数の病気でも)同時に治療できると仰っています。時間はかかるかもしれませんが、21世紀の、今後の医療の主流は、単一の治療、薬、1つの薬によるエビデンスから、これらマルチモデルなアプローチに変わっていくと思います。
 もちろん、医療の主流が変わるのを待っていられない、と言う患者さんもいらっしゃると思います。その場合は、統合医療を行っているクリニックで原因の1つ1つを治療されてください。これが確実でかつ唯一の方法です。問診や検査も使って、丁寧に状態を診断します。そして見つかった問題点を各々、妥協せず改善していきます。これはどんな状態の患者さんでもできます。もちろん早くに始めるのが理想ですが、遅すぎるということはありません。状態は今より必ず良くなります。その際、ビタミンC点滴は心強い味方になってくれるでしょう。もちろん、このような治療をずっと前から行っているのがリオルダンクリニックで、その治療の中心となっているのが、高濃度ビタミンC点滴なのです。もともとビタミンCが大好きでしたが、リオルダンクリニックに来て、今まで以上に大好きになりました。
 

アメリカカンザス州にあるリオルダンクリニック


リオルダンクリニックのハニハイキ院長(左から2人目)と著者(右から2人目)