連載 第82回 「医師である私ががんになったら」

なんの期待や不安もなく、祈るのみというか、自分が死んだ後も、
いのちがつながっていく希望のようなものが最期まであれば嬉しい。

 
取材協力● 前田裕輔   医療法人愛咲会 まえだ診療所 理事

 もし〝がん〟になってしまった場合、当然医師に診ていただくことになりますが、医師によって治療法が異なる場合があります。最近はセカンドオピニオンも定着してきましたが、なかにはいまだに患者さんから「セカンドオピニオンを受けるなら他の病院に行ってくれ」などと主治医に言われたという話も聞きます。
 そこで、医師自身のがんに対するお考えや、どのような選択を取られるのかなどをがん治療で活躍されている先生にシリーズにてお聞きしています。
 今回は、自然療法や伝統療法、国内・海外最新医療の中から厳選して、個々の患者さんに最善の治療を提供されている医療法人愛咲会 まえだ診療所(岡山市)の前田裕輔医師にお話を伺いました。前田医師は、まえだ診療所の医療統括責任者として、自然素材と庭のあるサロン空間の中で、安心で心地よく統合医療が受けられる場を提供されています。

取材・構成 吉田 繁光 本誌発行人

超早期の未病の段階で発見し、ライフスタイルを見直し、身体に優しい治療法で積極的な治療を行う

——がんは早期発見が大事だと言われますが、かからないことにこしたことはありません。先生はがん予防に何かされていますか。
前田 まずはがん予防という目的に対しての課題を知るために、栄養状態やホルモンバランス、免疫機能、重金属などの毒素、腸内環境などの検査を行い、現状を確認します。先日、唾液コルチゾール検査を行ったところ、結果が最悪でした。その結果から、生活や思考パターンを見直し、ビタミンCやアシュワガンダを意識して摂取しています。
——アシュワガンダとは初めて聞きましたが、どのようなものですか。
前田 インドのアーユルヴェーダで使われている、ナス科の植物です。根が抗ストレスのハーブとして知られていますが、日本では医薬品に指定されているため使用に規制があります。
——それでは、早期発見のための検診はどうされていますか。
前田 CTなどの一般的な画像検査でわかる大きさになる前の「超早期発見」を行う目的で、ミルテル検査、プロテオ検査、CTC、TMCA検査(腫瘍マーカー総合検査)などを行います。超早期の未病の段階で発見し、ライフスタイルを見直し、身体に優しい治療法で積極的な治療を行います。

自分の現在地を確認して課題を見つけ、課題に対するアプローチをプランニングする

——たしかにがんにならないことに越したことはありませんから、超早期で見つけることは有益ですが、どの検査ももう少し費用が安くなればもっと利用しやすくなると思います。
 では、残念ながらがんになってしまった場合はどうされますか。治療法をお聞かせください。
前田 まずは、①自分の現在地を確認した上で、②Hope for Cancerのコンセプトをもとに治療プランを作成します。①で課題を見つけ、②でその課題に対するアプローチをプランニングします。できればがんの原因だけでなく、がんの目的も考えます。目的がないと、その目的に対する課題は設定ができないですから。
 ①の方法としていつも私が患者さんへ提供している方法は、今の自分の状態を環境レベル、身体レベル、生化学レベル、エネルギーレベル、感情レベル、思考レベル、スピリチュアルレベルで分類し、整理をしていきます。それらを冷静に深く整理していくために、コーチングやカウンセリング、ヒーリングを行うことができる人にも協力いただき、自分の健全な決断をサポートしていただきます。
 詳しくは伝えきれませんが、たとえば生化学レベルでは、CTC検査、TMCA検査などのがんの状態を正確に知るためのバイオロジカル検査も行います。そして、現在地を知るためだけでなく目標を数値として見える化し、今後の効果判定にも活用します。身体レベルでは、MRIやCTで物質的な異常やリスクについて把握します。その他のレベルの情報も整理し、自分の現在地をホリスティックに認識するだけで、治癒プロセスへのスイッチが働くようになると私は考えています。
 ②については、難しいことは割愛しますが、免疫調整やデトックス、腸内環境改善、エモーショナルスピリチュアルケアなどを重要視しています
 もちろん食事療法や心理療法は実践します。栄養療法はサプリメントや点滴療法で行います。その他には、温熱治療、免疫療法、遺伝子治療、水素吸入療法、フコイダン、経絡エネルギー治療なども組み合わせ、治療プランを作成します。
 治療法は次々とアップデートされていますので、医師でも自分1人の知識だけで考えると不十分です。私は幸いにも様々ながんの専門家のドリームチームのネットワークがあります。そのドリームチームで症例カンファレンスをしていただくようにお願いすると思います。そういうチーム医療が広く構築できると素晴らしいですね。あとは治療に専念できる環境を整えます。最近、岡山の瀬戸内海に面したリゾートにクリニックを開院したのですが、そういう海と山の自然が豊かな環境での滞在型の治療が理想ですね。

「人生の完成期の支援」ということを意識した看取り医療に取り組んでいく

——今お話しになったことで、仮にがんの発生時期が今より先の老年期になった場合であれば、何か違いがあるかお話しください。
前田 まだ老年期のことは分かりませんが、違いはないと思います。
——そうですね。先生が老年期になるころには、治療法が確立してがんは難病ではなくなっている可能性が相当高いですから、今考えても無意味かもしれませんね。
 最後に、考えたくないことですが、万が一がんが進行して医師より「もう治療法はない」と言われたらどのようになされますか。
前田 食欲も気力もない状態を前提に考えると、水分も食事も摂取せずに断食して過ごすことになると思います。自分の人生をどのように仕上げて完成させるかという感覚になっているかもしれません。そう思うのは、私の母が河合隼雄さんや柳田邦夫さんの考えをもとに、「人生の完成期の支援」ということを意識した看取り医療に取り組んでおり、私もそこに日々関わっていることが影響しています。
 最後の気力をふり絞ってでも感謝の気持ちを伝えたい人がいるかもしれませんが、もはやそういう執着すら手放したいと思っているかもしれません。なんの期待や不安もなく、祈るのみというか。自分が死んだ後も、いのちがつながっていく希望のようなものが最期まであれば嬉しいです。

 

前田祐輔医師