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抗腫瘍キノコ研究45年―伊藤均氏に訊く

ヒメマツタケの真実

取材協力●伊藤 均 菌類薬理研究所所

2006(平成18)年2月に厚生労働省が「アガリクスを含む製品の安全性に関する食品安全委員会への食品健康影響評価の依頼について」と題した報告を行い、3製品のうちの1製品に「問題あり」として注意を喚起。アガリクスが悪者扱いされて、その期待は一気にしぼんでしまった。しかし、2008(平成20)年10月には厚労省がその内容を改訂し、他の製品については「問題がない」とした。問題があったのは1つの製品だけで、他の製品はまったく問題がなかったわけであるが、「悪い」との情報はマスコミが大々的に報道してアガリクスを悪者にし、「問題ない」との報道はほとんどされなかった。これでは一般消費者の認識は、アガリクスは「悪者」のままになっている。事実はどうなのか……?
一般に「アガリクス」と呼ばれるキノコは実際には存在せず、数百種類のキノコからなる「ハラタケ属」の総称である。学会でその有用性が報告されているものは、そのなかの和名「ヒメマツタケ」・学名「アガリクス・ブラゼイ」に関するものであり、菌類薬理研究所所長を務めている伊藤均氏(元三重大学医学部助教授)は、この「ヒメマツタケ」の薬理作用について45年という長期にわたり研究に携わっている。先月号に引き続いて今月号でも、健康食品としての〝アガリクスの評価〟について伊藤所長にお話しを伺った。

免疫の活性化について

068-070 検証ー「アガリスク」(下)-図1.tif図1――私は伊藤先生に、読者であるがん患者さんの立場でお聞きしていますが、一般に言われていることは、患者さんは免疫力を上げて標準治療に耐え抜く体力を維持することが大切であり、必要と言われています。そのことは、ほとんどのがん患者さんもご存じだと思います。そこで、免疫力を活性化させるとはどういうことかについて、もう少し詳しくお伺いしたいのですが。

068-070 検証ー「アガリスク」(下)-図2.tif図2伊藤 免疫とは簡単に言うと、体に入ってくる好ましくない異物をやっつけるシステムのことです。こちらに「人の免疫の仕組み」を模式図にしたものがあります(図1を参照)。これをご覧になれば、細菌やウイルスなどの病原体に対して、免疫が人体を守っている様子がおわかりになると思います。がん患者さんはもちろんのこと、健康な方も免疫力の低下には十分に注意しなければなりません。
免疫の活性化についてヒメマツタケとの関連をお話すると、図1ではマクロファージが〝番人と兵士の役割〟を担うと記載しましたが、ヒメマツタケを投与すると補体第3成分、ヘルパーT細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージが活性化して免疫が高まる研究結果が出ています。図2にそのときの様子が確認されています。今回はお示ししておりませんが、ヒトの臨床試験においても、これら基礎試験の結果を裏付けるデータが得られており、科学的根拠に基づくヒメマツタケの作用は数多く検証されています。

ヒメマツタケ(アガリクス・ブラゼイ)の抗がん作用

――免疫力はとても重要で、活性化すれば良い結果を人体にもたらしてくれる。そして、ヒメマツタケが活性化に大きく寄与していることを検証されたのですね。
そこで、ズバリお伺いしますが、ヒメマツタケはがんに対する抗がん作用が期待できますでしょうか。

伊藤 そうですね。薬事法の関係があり、「がんに効く」とか「がんが治る」とは言えないことは、多くのがん患者さんがご存じだと思います。また、ヒメマツタケを食べて、たちどころにがんが治るなら、がんは難病ではなくなります。
ただし、先程免疫担当細胞の主役であるマクロファージが活性化されることはお話ししました。つまり免疫力が上がり、それによりがん細胞をやっつけてくれる期待が持てます。もちろん、個人差はありますが。
それに加えて、豊富な栄養素があるということをあげさせていただきます。高血圧を予防すると言われているカリウムをはじめ、必要不可欠なマグネシウムを豊富に含んでいます。また、ビタミンB2やビタミンDに変身するエルゴステロールも豊富に含んでいます。ほかにもコレステロールや血管の血栓を防ぐリノール酸やパルミトオレイン酸の含有量が高くなっています。また、多糖体という言葉をご存じでしょうか。私たちがご飯などから摂取した炭水化物は体内で分解され、ブドウ糖に変わります。このブドウ糖のように炭水化物がもっとも単純な形になったものを単糖と言いますが、多糖体はこれがいくつも結合した高分子物質のことです。この多糖体に抗がんパワーがあると言われだしたのは今から100年以上も前ですが、国立がんセンター所長であった、故・中原和郎先生がササの葉の多糖体、ササホリンの研究を始められてから、キノコ類多糖体の研究が盛んになりました。
私も、三重大学医学部で1980年に開催された第39回日本癌学会総会などで、ヒメマツタケの抗がん作用について発表しました。

――ヒメマツタケ(アガリクス・ブラゼイ)の多糖体は免疫を活性化させ、多糖体には強力な抗がんパワーがあるということですね。

伊藤 そうです。そして、ヒメマツタケ特有の多糖体である(ϐ-(1→6)-D-グルカン)は、他のキノコよりも多くのたんぱく質と結合しているという特徴があります。多糖体は、タンパク質と結合することにより消化管から体内への吸収が良くなります。体内に吸収されなければ、どんなに良い成分を含んでいても無意味です。
現在、国内のがんにおける死因では第1位と2位が肺がんと胃がんです。私はヒメマツタケから抽出した新規ステロイド(ブラゼイン)がこの肺がん細胞と胃がん細胞を自殺に追い込むアポトーシス誘導作用を持ち、正常な細胞には害を及ぼさないことを確認しました。この結果をまとめた論文は海外の学術誌に掲載されました。
この他にも、ヒメマツタケの抗がん作用についての研究成果については学会などでたくさん発表されています。

ヒメマツタケ(アガリクス・ブラゼイ)を原料とするサプリメントの上手な摂り方について

――効果的な飲み方や製品の選び方などを教えてください。

伊藤 先程の話題にもありました通り、厚生労働省の発表にありました「1製品は有害であった」というのは本当だと思います。せっかくお金を出しても有害なものを飲んでしまうことは悲劇ですので、製品の選び方には注意を要します。
選び方としては、菌株(種菌)や栽培方法、産地はどこであるかに注意することです。菌株は、きちんとした研究データのある「岩出101株」をお勧めします。
また、産地は私が知る限りJICA(日本国際協力事業団)の援助を受け、日本が品質管理を行っているパラグアイなら安心だと思います。栽培方法は、無農薬・有機栽培が理想だと思います。
摂り方は、1日に1度で摂るのではなく、空腹時や食間に飲用されたほうがよいと思います。あくまでも食品というカテゴリーですが、がん患者さんは高いお金を出して、ただの食品として飲まれるはずはありません。製品に1日の標準的な「召し上がり方」が書いてあると思います。理想的な摂取量を知ることは大変難しいと思いますが、血液検査により自身の免疫力を計り、結果を見て量を加減することです。

免疫力を上げ、抗がん剤や放射線治療の副作用を軽減

――最後に、先生のこれまでの研究の成果として、ヒメマツタケ(アガリクス・ブラゼイ)に対する評価をまとめてください。

伊藤 標準治療と言われる抗がん剤にしても、残念ながら患者さん全員に効くわけではありません。そして、重い副作用を伴う場合が多くあります。
私は、標準治療はもちろん否定しませんが、ヒメマツタケを摂って免疫力を上げておくことが重要だと思っています。そうすれば、標準治療の副作用も軽減される場合が多く見られるからです。放射線治療を受けておられた、吉田さんのお父様もそうだったのではないでしょうか。生活面からもQOL(生活の質)は大切ですが、ヒメマツタケはこれに対しても非常に有益なものだと思っています。

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